ギフティングとは、自社の商品をインフルエンサーに無償で送り、使った感想を任意で投稿してもらう施策です。検索上位の解説記事は、定義やメリット、進め方を丁寧に説明しています。ただ、送った商品の投稿が実際にどれだけ反応を集めるのかを、数字で示した記事は見つかりませんでした。
そこで、Virevが収集している日本語のInstagramクリエイター4,400人、投稿226,150件を集計しました。キャプションに「ご提供いただきました」「お試しさせて頂きました」などと書かれた投稿は、同じ人の普段の投稿の 0.86倍 のいいね+コメントを集めていました。Instagramのタイアップ投稿ラベルが付いた投稿は0.64倍です。この記事では、その差をフォロワー帯とジャンル別に分け、CASETiFYとDior Beautyの実際の投稿で確かめます。最後に、費用の試算と30人で試すときの手順を載せます。
4,400人
日本語のクリエイター
226,150件
投稿
0.86倍
提供と明記した投稿
0.64倍
タイアップ投稿ラベル付き
ギフティングと有償タイアップの違い
ギフティングでは報酬を払わず、商品だけを送ります。投稿は義務ではなく、内容も細かく指定しません。有償タイアップは報酬を払い、投稿の本数、日程、伝える内容を契約で決めます。
| 項目 | ギフティング | 有償タイアップ |
|---|---|---|
| 報酬 | なし(商品のみ) | あり |
| 投稿 | 任意 | 契約で確約 |
| 内容の指定 | 最小限 | 構成や訴求点まで指定 |
| 費用の中心 | 商品原価、送料、作業時間 | 報酬(フォロワー単価2〜4円が目安とされる) |
報酬の目安は、ジールセキュリティの記事にある「フォロワー数×単価(2〜4円)」を使いました。ギフティングでも、ブランドが投稿を依頼して内容に関わっていれば、広告としての表示が必要です。表示については最後の章で触れます。
調べ方
対象は、Virevのクローラーが2026年6月以降に読み込んだ公開Instagramアカウントのうち、フォロワー1,000人以上で、キャプションの半分以上にひらがなかカタカナを含むアカウントです。プロフィール分析で国が日本、または主な言語が日本語と判定されたアカウントも含めました。企業、店舗、メディアと判定されたアカウントは除き、残った4,400人を「クリエイター」としています。
投稿は、ピン留めといいね数非表示を除き、取得時点で投稿から3日以上たったものだけを使いました。キャプションの文言で、投稿を次の5つに分けています。
- タイアップ投稿ラベル付き: Instagramの「タイアップ投稿」表示がある投稿(5,024件)。
- 提供・ギフティングと明記: 「ご提供いただきました」「提供頂きました」「商品提供」「ギフティング」「#gifted」「お試しさせて頂きました」「発表会にご招待いただきました」「〇〇様からいただきました」など、ブランドから受け取ったと書かれた投稿(503件)。
- #PR表記のみ: 上の文言はなく、「#PR」「#広告」「#プロモーション」などだけが付いた投稿(3,483件)。
- プレゼントキャンペーン: 「応募方法」「当選」「名様にプレゼント」などを含む、フォロワー向けの抽選企画(1,535件)。
- 普段の投稿: どれにも当てはまらない投稿(215,605件)。
比べ方は、クリエイターごとに「普段の投稿のいいね+コメントの中央値」を出し、各投稿がその何倍だったかを計算する方法です。フォロワー数の違う人を同じ物差しで比べられます。普段の投稿が5件以上ある4,365人を使い、1人ごとの中央値をとってから、全員の中央値を出しました。
文言による分類なので、漏れも誤りもあります。画像の中だけに「PR」と書いた投稿は#PR表記のみに入らず、普段の投稿に数えています。抽出した提供投稿から40件を無作為に選んで読んだところ、36件は実際にブランドから受け取った商品や招待の投稿でした。残りは「会場をご提供いただいた」のような別の意味の文でした。
提供と明記した投稿は普段の0.86倍、タイアップは0.64倍
ブランドが関わる投稿は、どの形でも普段の投稿より反応が少なくなりました。ただし、下がり方には差があります。
| 投稿の種類 | 普段比(中央値) | 普段を上回った人の割合 | コメントの普段比 |
|---|---|---|---|
| 提供・ギフティングと明記 | 0.86倍 | 36% | 0.88倍 |
| #PR表記のみ | 0.76倍 | 30% | 0.83倍 |
| タイアップ投稿ラベル付き | 0.64倍 | 22% | 0.77倍 |
| プレゼントキャンペーン | 1.12倍 | 57% | 1.21倍 |
提供と明記した投稿は、コメントも普段の0.88倍を保っていました。タイアップ投稿ラベル付きは、いいねもコメントも普段の6〜8割です。
理由として考えられるのは、投稿の決め方の違いです。ギフティングでは投稿が任意なので、クリエイターは気に入った商品だけを載せます。気に入らなかった商品の投稿は、そもそも存在しません。タイアップでは、契約した以上は投稿し、ブランドが決めた構成に沿って書きます。この差は、ギフティングの強みであると同時に、集計の偏りでもあります。0.86倍は「送った商品すべての平均」ではなく、「投稿された商品の平均」です。
プレゼントキャンペーンが普段を上回ったのは、応募の条件に「コメント」や「フォロー」を入れることが多いためです。コメントが1.21倍になっているのはそのためで、商品への関心の強さとは分けて読む必要があります。
どのフォロワー帯がギフティングを受けているか
ブランドとの関わりがいちばん多いのは、フォロワー10万〜50万人の層です。この層の40%が、期間中に提供、#PR、タイアップのいずれかの投稿をしていました。1千〜1万人では10%にとどまります。
| フォロワー | 人数 | 何らかの表示あり | 提供と明記 | 提供投稿の普段比 | タイアップの普段比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1千〜1万人 | 967 | 10% | 2% | 0.99倍 | 0.86倍 |
| 1万〜5万人 | 1,483 | 21% | 3% | 0.85倍 | 0.67倍 |
| 5万〜10万人 | 819 | 29% | 5% | 0.85倍 | 0.61倍 |
| 10万〜50万人 | 840 | 40% | 8% | 0.86倍 | 0.61倍 |
| 50万人以上 | 291 | 38% | 3% | 1.09倍 | 0.62倍 |
1千〜1万人の層は、ブランドからの依頼がまだ少ない層です。この層の提供投稿は普段の0.99倍で、反応がほとんど落ちていません。ただし対象は22人です。50万人以上の1.09倍も8人分の値なので、参考にとどめてください。
1万〜50万人では、提供投稿の普段比が0.85〜0.86倍でそろっています。同じ層のタイアップは0.61〜0.67倍です。どの層でも、提供投稿のほうがタイアップより普段の反応に近い結果でした。
どのジャンルで提供投稿が多いか
提供と明記した投稿の51%が、コスメ・スキンケアの投稿でした。普段の投稿に占めるコスメ・スキンケアは5%なので、ギフティングはこのジャンルに大きく偏っています。新作の発売前に化粧品を送り、「発売前にお試しさせて頂きました」と書いてもらう形が定着しているためです。
食品と飲食店は事情が違います。この分野のブランド関連投稿2,764件のうち、提供と明記したものは39件(1%)だけでした。残りはタイアップ投稿ラベルか#PRだけの投稿です。飲食店の招待や食品の紹介では、表示を「#PR」で済ませることが多いと読めます。
提供投稿でメンションされたブランドを、投稿したクリエイターの人数で並べると次のとおりです。
| ブランドのアカウント | クリエイター数 | 投稿数 |
|---|---|---|
| @casetify_jp と @casetify | 18 | 18 |
| @diorbeauty | 6 | 7 |
| @snidelbeauty | 6 | 6 |
| @yslbeauty | 5 | 7 |
| @laneige_jp | 4 | 4 |
| @paris64world | 4 | 5 |
| @cledepeaubeaute、@rmkofficial、@tomfordbeauty、@decorte_official、@fwee_makeup_jp | 各3 | 各3 |
上位10ブランドのうち8つが化粧品です。1位だけがスマホケースのCASETiFYでした。
事例1: CASETiFYの #gifted 投稿18件
CASETiFYは、2025年11月から2026年8月にかけて、日本のクリエイター18人が「#gifted」を付けて投稿していました。フォロワーは4.0万〜29.2万人です。BOYNEXTDOORとのコラボケースや、Maison Kitsunéとのコラボケースなど、新作ごとに送っている様子がキャプションから読み取れます。
18件の投稿は合計で78,196のいいね+コメントを集めました。18人中11人で普段の投稿を上回り、倍率の中央値は1.22倍です。全体の提供投稿(0.86倍)より高い値でした。
いちばん伸びたのは、フォロワー5.1万人の @yt_u_ の投稿 です。BOYNEXTDOORのキャラクターが入ったクリアケースを紹介し、4,921のいいね+コメントを集めました。この人の普段の投稿は中央値1,708なので、2.88倍です。好きなアーティストのコラボ商品を、ファンであるクリエイターに送った組み合わせでした。
表示の面では、18件のうち「#PR」も併記していたのは2件でした。ほかの16件は、ハッシュタグの最後に「#gifted」を付けています。消費者庁の運用基準は、多くのハッシュタグの中に広告である旨を埋もれさせる表示を、明瞭でない例として挙げています。英語の「#gifted」だけで日本の読者に伝わるかも、ブランド側で判断が要る点です。
事例2: Dior Beauty、同じブランドで形式を比べる
Dior Beautyは、同じブランドの中で提供、#PR、タイアップの3つの形が並んでいました。キャプションの冒頭150字に「Dior」か「ディオール」がある投稿だけを数えています。
| 形式 | 投稿数 | クリエイター数 | 普段比(中央値) | コメントの普段比 |
|---|---|---|---|---|
| 提供・お試しと明記 | 13 | 8 | 1.06倍 | 1.10倍 |
| #PR表記のみ | 27 | 22 | 0.72倍 | 0.81倍 |
| タイアップ投稿ラベル付き | 19 | 14 | 0.55倍 | 0.59倍 |
提供と明記した投稿の多くは、「発売前にお試しさせて頂きました」という形です。たとえばフォロワー32.4万人の @maimai.007 の化粧下地の投稿 は、2,398のいいね+コメントで普段の1.58倍でした。タイアップ投稿ラベル付きの19件は、フォロワー11.5万〜108万人と大きいアカウントが中心で、普段の0.55倍です。
件数が少ないので、この差をそのまま一般化はできません。それでも、同じブランドの同じ時期の投稿で、全体と同じ順番(提供、#PR、タイアップ)になりました。
投稿率は何%を見込むか
反応の倍率は「投稿された場合」の数字です。費用を見積もるには、送った人のうち何人が投稿するかも要ります。公開されている数字には大きな幅があります。
| 出典 | 条件 | 数字 |
|---|---|---|
| STATS(2022〜2026年の自社案件) | 44案件・342人、投稿義務なし | 投稿率91%(1案件だけ33%) |
| THECOO(ギフティングの事例) | コスメ100人、フレグランス65人 | 投稿率32%と35% |
| インターファクトリー(筆者の経験) | 面識のない相手へのDM依頼 | 返信が来るのは5〜10% |
91%は、事前に受け取りの意思を確かめた相手に送った場合の数字です。STATSは、投稿率が低かった1案件について、ブランドとクリエイターの世界観のずれ、ギフトと期待のずれ、送る時期の3つを理由に挙げています。5〜10%は、DMを送った段階の返信率です。投稿率と返信率は別の数字なので、計画では両方を分けて見込みます。
費用の試算: いいね+コメント1件あたり何円か
フォロワー1万〜5万人のクリエイター30人に送る場合で試算しました。この層の普段の投稿は、いいね+コメントの中央値が712です(フォロワー中央値は24,561人)。
- ギフティングの費用: 1人あたり5,000円(商品原価2,500円、梱包と送料1,000円、選定と連絡の作業1,500円)。30人で15万円。
- 投稿1件の反応: 712 × 0.86 = 約616。
- 有償タイアップの費用: フォロワー単価3円 × 24,561人 = 1件あたり約7.4万円。30件で約221万円。
- タイアップ投稿1件の反応: 712 × 0.64 = 約453。
| 条件 | 投稿数 | いいね+コメント合計 | 1件あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| ギフト、投稿率91% | 27 | 約16,800 | 約9円 |
| ギフト、投稿率50% | 15 | 約9,200 | 約16円 |
| ギフト、投稿率30% | 9 | 約5,500 | 約27円 |
| 有償タイアップ、30件確約 | 30 | 約13,600 | 約163円 |
投稿率が30%まで下がっても、反応1件あたりの費用はタイアップの約6分の1です。ただし、タイアップには投稿の本数と日程が確実になる、伝える内容を決められる、二次利用の許諾を契約に入れられるといった別の価値があります。発売日に合わせて必ず露出が要る場合は、タイアップを選ぶ理由になります。
30人のギフティングテストの手順
初めてなら、30人に1回送り、結果を見てから次を決めるのが安全です。上の試算と同じ15万円前後で始められます。
- 目的を1つに絞る(1週目)。 「投稿率」「普段比の反応」「指名検索の増加」などから1つ選び、判定の基準を先に書きます。たとえば「投稿率50%以上、普段比0.9倍以上」です。
- 候補を60〜90人集める(1週目)。 返信しない人や断る人がいるので、送る人数の2〜3倍を用意します。ジャンル、使用言語、フォロワー帯で絞り込み、ブランドの世界観に合うかを最近の投稿で1人ずつ確かめます。
- 普段の反応を記録する(1週目)。 各候補の直近12投稿のいいね+コメントの中央値を控えます。後で普段比を出すための基準になります。Instagramエンゲージメント率計算ツール を使うと、アカウントごとの普段の数字をまとめて確認できます。
- PRの多さを確かめる(1週目)。 直近の投稿の多くが#PRやタイアップなら、フォロワーが広告に慣れている可能性があります。この記事の集計では、10万〜50万人の層の40%が期間中にブランド関連の投稿をしていました。
- 受け取りの意思を確かめる(2週目)。 商品名、投稿は任意であること、投稿する場合の表示のお願いを伝え、承諾した人にだけ住所を聞きます。住所は社内で決めたフォームで集め、配送の担当者だけが見られるようにします。
- 発送する(3週目)。 商品の説明、使い方、問い合わせ先を同封します。表示の例として「#PR」や「〇〇から商品の提供を受けて投稿しています」を添えます。季節やイベントに合う時期に届けると、投稿の理由が生まれます。
- 投稿を記録する(3〜6週目)。 投稿を見つけたら、投稿から3日後のいいね+コメントを記録し、手順3の基準で割って普段比を出します。投稿がない人に催促はしません。
- 判定して次を決める(6週目)。 普段比が1.0を超えた人、コメントが普段以上についた人は、次回の継続ギフティングや有償タイアップ、アフィリエイトの候補にします。投稿率が基準を下回ったら、候補の選び方と送る時期を見直します。
記録表には、アカウント、フォロワー数、普段の中央値、承諾日、発送日、到着日、投稿URL、3日後の数字、普段比、表示の有無の列を作っておくと、次回も同じ基準で比べられます。
ステマ規制と表示
2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(いわゆるステマ)は景品表示法違反になりました。規制の対象は広告主であるブランド側です。商品を無償で渡して投稿を依頼し、投稿の内容がブランドの方針に沿ったものであれば、ブランドの広告とみなされます。消費者庁の運用基準は、明瞭な表示の例として「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」という文言と、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章を挙げています。
今回のデータでは、ブランドから受け取ったと書いた投稿611件のうち、「#PR」などの文言かタイアップ投稿ラベルも付いていたのは175件(29%)でした。残りは「ご提供いただきました」などの文章だけで関係を示しています。文章による表示も運用基準の例に入っていますが、ハッシュタグの最後に埋もれていないか、読者がすぐ気づく位置にあるかは、ブランドが発送前に指示しておくべき点です。表示の位置や文言の決め方、40万件の投稿で見た表記の実態は ステマ規制とPR表記の実態 にまとめています。
Virevでできること
この記事の集計は、Virevのクリエイターデータを使っています。Virevのギフティング機能 では、ジャンル、言語、フォロワー帯、エンゲージメントでクリエイターを探し、確認済みのメールアドレスで受け取りの意思を聞き、誰が承諾し、発送し、投稿したかを1つの画面で追えます。候補探しから始める場合は クリエイター検索 を使ってください。
英語の記事ですが、ギフティングと有償タイアップの使い分け と ギフティングの効果の測り方 も参考になります。Instagram全体のエンゲージメント率の目安は Instagramエンゲージメント率のベンチマーク(英語)にまとめています。


